アンクルトリス

山口瞳開高健「やってみなはれ・みとくんなはれ」読了。サントリー社史を元社員の2強が綴る。山口瞳も好きだけど並べて読むと開高健がやっぱり圧倒的。と言うか開高が山口をサントリーに引っ張り込んだとは寡聞にして知らなかった。商売は陰徳と、不撓不屈の精神が必須と再認識する。あと現代の日本人はやっぱり働かなさすぎるのではないか。挿絵は当然みたいに柳原良平

 

石井光太「絶対貧困」も読了。アジアの貧困層のルポタージュ。まあたまにはこんなん読むのもいいんじゃない?みたいな。しかし老若男女問わず、彼らの生命への執着は見るべきところがある。

 

李恢成、かいせい?「われら青春の途上にて」も読了。古本屋の本棚で見つけて何回も買うたやめた音頭を踊った本。民族の誇りを具えた在日朝鮮人の日本での生き方の難しさを描く。表題作の構成も凄かったが、併載の「死者の残したもの」の、「とにかくあんたらは何にでも反対する、悪い癖よ、いいもんはいいといわにゃあなるめぇ」と民団のひとりがとうとう語る一連が圧巻だった。

 

マイク・モラスキー編「闇市」も読了。闇市に関わる日本短編文学のアンソロジー。太宰、永井荷風と目当ての野坂昭如はまあ間違いないところで、拾い物だったのが鄭承博の「裸の捕虜」と、平林たい子の「桜の下にて」の二編。前者は善良で実直な在日朝鮮人の好感度が作品の面白さに拍車をかける。後者は闇市と縁遠い世界で生きてきた女学生らを描く華やかな筆致と、これに次第に影を落とす戦後の困窮の陰影が美しかった。しかし同じく所収の坂口安吾は喩え短編でも相変わらずさーっぱりワカラン!