一直線とはなにか

なかむらたかしの絵が心から嫌いだったんで観たことなかったATX未来警察ウラシマン。全50話。オープニングで下っ端ハスラーとばかり思ってたルードビッヒが実はネクライム(笑)次期総統と知ってびっくりしたが、どう見ても好きになれないルードビッヒを視聴者全員が好きでないとおかしい前提で作ってる作劇はいかがなものか。扱いに困って始終ぞんざいだったリュウの用途不明の超能力が終盤唐突にクローズアップされるのも謎。ガッチャマン2の池田勝よろしく神谷明がひとりで頑張ってたが、真下耕一はやっぱりダメだ。

 

年末に相棒から貸してもらったと言うか押し付けられたと言うか、「少年の街ZF」全巻と「柔道一直線」完全版を読了。前者は小池一夫のうんちくが功を奏して長丁場でも結構納得いく展開になってたけど、オチは些か唐突過ぎ。後者は怪柔道家が続々登場する仮面ライダーみたいなテレビシリーズを丁寧に描いてる印象で、しかしあとからあとから登場する強豪らにはやっぱりうんざりするついでに「空手戦争」みたいな終盤は梶原作品らしくきっちりヤクザも登場する。でもまあ梶原一騎まるだしの鬼車の過去ばなし(丸井君の立場はなくなるけど)と大完結編はシャレでないけど簡潔でよかったのでよしとする。キャラクターはテレビシリーズで岸田森が演じた香川先生が出色だと思う。

平和の戦士S26号!

オタク終活「トリプルファイター」全26話。若槻文三のインテリジェンスな文芸が兎に角、最高で、藤川桂介なんか端から論外、深刻な筆致でトクサツファンに人気の高際和雄ですらその足下には遠く及ばず、パリ本部、アパッシュ、テロル、オルリー空港にミラージュと、初代ウルトラマン以来のヨーロピアンな雰囲気も文句なし、これに比べたら「マイティジャック」(オリジナルの若槻脚本は悪くなかったけど)なんて鼻くそも同様の極上のエスエフ・スパイアクション。巨大ロボット・トリプルファイターも最高にカッコよく、安藤・鈴木・大塚の助監あがりらしいアバンギャルドな演出も冴えて、トクサツはアイデアにセンスだと改めて痛感する。間違いなく全円谷作品でも随一の完成度と目するが、あえて残念だったのは終盤のデーモン怪人が中盤までのそれに比べて「デザイン」が張り切りすぎてカッコ悪かったことくらい。ちなみに関西人はこの番組のおかげさま、ウルトラセブンが前座番組である印象がいまだに払拭できない。サットバギーの初登場シーンはマックイーンの「華麗なる賭け」のオマージュだと思うのは余談。

ダイナマーイト!どんどん!

徹底した不条理を描いて毎週の楽しみだったATXアキバ冥途戦争」が圧巻の最終回をもって終わってしまったが、こんな凄いアニメを作れる人がいるならまだまだアニメも捨てたもんではないのではないか。あと放送中は存在すら知らなかったATXワンダーエッグプライオリティ」は、白日夢もいいところの異世界ものが跋扈するアニメ市場でキビシー現実描いて受けるはずもなく、これも出来のいいエスエフだったのに残念。男性教師が本当にいい人だったのは野島伸司セルフパロディだったのかしらん。あとATXと言えば「決断」は今回も川上の最終回がなかった。これも残念。

コールフィールド

徳永直「太陽のない街プロレタリア文学にしてはやたら快活な筆致で「蟹工船」より面白かった。巻末の作者自身の回顧録も良かった。ヘミングウェイ海流のなかの島々・上下」楽しみにしてたけどあんまり面白くなかった。流石生前出版しなかっただけのことはあると言うか、名匠ヘミングウェイにもハズレがあるとひとりごちる。エーリヒ・ケストナー終戦日記一九四五」あの「ふたりのロッテ」のケストナー終戦間際の日記。日本のそれと比べるとドイツ終戦前夜は恐ろしく暢気でびっくりする。ボーヴォワール「人はすべて死す・上下」序盤でしまったと思った本は大概面白くなる不思議。これもその一冊。妙薬で不死になった主人公が世紀を跨いで人の生き様を問う空想譚。ラストはスティーブン・キングが「グリーンマイル」でパクってる。アンドレ・ブルトン「ナジャ」30年ぶりにブルトン読んだけど「シュール・リアリズム宣言」に比べると遥かに分かり易い。口絵が多いから?三好徹「チェ・ゲバラ伝・増補版」等身大のゲバラの生き様と広島を巡るエピソードが面白かった。辻邦生「異邦にて」ショッキングな「洪水の終わり」がこれにも所収されててびっくりする。よほどの自信作なのかしらん。「ある晩年」は海外文学のようだった。サリンジャーキャッチャー・イン・ザ・ライ村上春樹の翻訳は好きだけどこれは白水社のが良かったと思ったらこれも白水社だった。ライ麦畑は白水社の独占なのか?マンハッタンの自然史博物館のくだりは何度読んでもいい。あと例によって現代日本から消えた大人の息遣いが横溢してうっとりする開高健の「短篇選」「サイゴンの十字架」「日本三文オペラ」など。帰りの電車でどんなに疲れてても開高健の本だけは眠くならない不思議。

退治する!

オタク終活「ワイルドセブン」。全25話。昭和48年のお年玉は全部アオシマのプラモデルに消えたくらい(と言って千円そこそこだったけど)大好きだった番組。かつてLD出たときの所感同様、怪力ヘラクレスと小野信也が怪我して引っ込む中盤がちょっとしんどかったのと、両国役の小池雄介の降板と恐ろしく小物だった山本鱗一の首領が残念だったけど(つかスパイダーの幹部陣は猫を抱いた上野山功一筆頭、なんか揃いも揃ってはずれだった)、50年経ってもワイルドセブンは相変わらず最高に面白かった。就中銀幕の脚本陣を向こうに「マシーンガン・ロック」「200キロ心中」「奇襲!トライアル作戦」と我らがウエショーの脚本が粒揃いなのが嬉しい。でも同じニセモノ回としてはパチンコ屋の集会が最高の「やさぐれ非常線」より終盤で好き勝手した風情の「裏切りの星を撃て」のが渋くてカッコいい。ちなみに望月三起也の原作は読んだことありません。

 

オタク終活「ザ・ウルトラマン」。全50話。鳥海永行と二宮常雄の私的ベストコンビの作品。しかし序盤はウルトラマンを意識してカッコいい怪獣が出てきてなんぼの単調なハナシばかりだったのが、鳥海御大がかの「これがウルトラの星だ!」を残して降板して以降、しかも怪獣デザインが鯨井実のゲテモノになってからのエスエフ路線のが俄然、面白くなるのがなんとも上手くない。さらにメカも大河原御大からぬえと言うか河森に変更、ついでに作画も二宮と中村一夫以外はほんまどうしようもなくなるけど、独自のウルトラマン観で「君がウルトラマンだ」と最終回を描いた吉川惚司のおかげさま、結句、悪くない印象でまとまっていて、アニメでもトクサツの80より圧倒的に好感度が高い。ちなみに当時まだ声優なんか全然意識してなかったんで、クラスメイトに「古代くんがヘンシンしてデスラーになるってすげえな!」と言われてそうか!と思ったのも懐かしい。

 

オタク終活「冒険ファミリー・ここは惑星0番地」。全20話。当時流行りのアドベンチャーファミリーとスターウォーズを真似して作った安易さの割に結構ハードな展開に目が離せず、これも当時から好きだった番組。なんたって「宇宙からのメッセージ」と同じひおあきらのメカニックがいい。特に日本号はタカトクのプラトーイ(これはボーンフリー号の真似だったけど)とも出色の意匠だったと思う。三家族が惑星に連れられる開巻と、非情の惑星大爆発までのラストを伊上先生が人間賛歌で見事にまとめあげた一方、性善説を旨としていた高久御大が安易に家族間の軋轢ばかり描いてたのはGメンでやさぐれてたからかしらん。

サンダーマスクを殺すのか!?

オタク終活「Xボンバー」相棒にDVD借りて放送前特番抜きの全25話。当時、ゴッドマーズとも自然消滅した番組で、全話通して観るのはびっくり今回が初めてだったけど、現行特撮が乏しい時代の宇宙船が放映前の一回しか特集しなかったのも頷けるようなきっぱり出来損ない番組だった。どこからどう見てもカッコ悪い母艦Xボンバーに、トリプルアタッカーが合体したところで終わりのビッグダイエックスと、相も変わらず全編カタルシスの欠片もない藤川桂介の脚本(就中、女幹部を巨大ロボットのパンチですり潰す主人公に、敵の親玉をヒロインが倒すのは唖然とする)に、ほとんど変わり映えがしない冗長な絵面で面白くなる道理もなく、主人公らがナニがやりたかったのかすらワカラン展開をやたら入る総集編がさらに混乱させる。結局、「空中都市008」以来のSF人形劇のファーストインプレッションだけの番組で、高橋章も三上陸男も美術や造形は一流でも監督としては三流以下だったのは、激烈に絵が上手い安彦良和の監督作品が揃いも揃って愚作であるのと同じく、人間やっぱり部をわきまえることが肝要と言うこと。ラミアとブラディマリーのビキニアーマーと、美形すぎる銀河シローの造形がなかったらほんまにヤバい番組だったと思う。しかしカスター大尉が死ぬハナシと、ラミアとハリーが邂逅する前後編だけは別格で出来が良かったのが謎。ついでにシローの声はパイロットの安原義人のが古川のひゃくまんばいいいと思う。

しかし徹底して武装解除を謳っていた郷ひろみそっくりの国王が瞬く間に反撃を命じたり、シローと一緒にいたいとエックスボンバーに乗り込んだはずのラミアが次のシーンでサブロー博士に私も地球のために戦いたい!と訴えるのはサスガはパラジュードンの藤川先生のことだけはある。大笑い。死んでしまえ。

 

 

ソ・ソ・ソクラテスかプラトンか

サルトル「嘔吐」読了。難解なこと覚悟で読み始めたら全然つまらず一気に読めて、しかも面白くてびっくりした。これは新訳が上手かったのかと思ったら以前のプルースト読本の鈴木道彦氏で納得。氏の溢れんばかりの知性が綴る、そして本編を謙虚に際立たせるあとがきも最高。読んだら売ろうと思ったけど以前のリルケの「マルテの手記」とセットで今後も愛読したい。自分は紀伊国屋で買ったけどオークションでも高いわけよ。

 

ガルシア・マルケス中短篇 傑作選」も読了。みんなが凄いと絶賛するガルシア・マルケスの良さがいまだ良く分からない。と言うワケで文庫で1200円は高い。「予告された殺人の記録」は映画も好きだけど。

 

ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引書」も読了。西の藤澤清造みたいなダウナー系のハナシばっかりだったけど読んだことのない筆致ばかりでどれも面白かった。これで文庫でも900円は安い。上流階級から最下層のシングルマザーまで、ほとんど著者の実体験と言うのも凄い。

 

あと開高健の白いページ全3巻とか色々読んだけど忘れた。