コールフィールド

徳永直「太陽のない街プロレタリア文学にしてはやたら快活な筆致で「蟹工船」より面白かった。巻末の作者自身の回顧録も良かった。ヘミングウェイ海流のなかの島々・上下」楽しみにしてたけどあんまり面白くなかった。流石生前出版しなかっただけのことはあると言うか、名匠ヘミングウェイにもハズレがあるとひとりごちる。エーリヒ・ケストナー終戦日記一九四五」あの「ふたりのロッテ」のケストナー終戦間際の日記。日本のそれと比べるとドイツ終戦前夜は恐ろしく暢気でびっくりする。ボーヴォワール「人はすべて死す・上下」序盤でしまったと思った本は大概面白くなる不思議。これもその一冊。妙薬で不死になった主人公が世紀を跨いで人の生き様を問う空想譚。ラストはスティーブン・キングが「グリーンマイル」でパクってる。アンドレ・ブルトン「ナジャ」30年ぶりにブルトン読んだけど「シュール・リアリズム宣言」に比べると遥かに分かり易い。口絵が多いから?三好徹「チェ・ゲバラ伝・増補版」等身大のゲバラの生き様と広島を巡るエピソードが面白かった。辻邦生「異邦にて」ショッキングな「洪水の終わり」がこれにも所収されててびっくりする。よほどの自信作なのかしらん。「ある晩年」は海外文学のようだった。サリンジャーキャッチャー・イン・ザ・ライ村上春樹の翻訳は好きだけどこれは白水社のが良かったと思ったらこれも白水社だった。ライ麦畑は白水社の独占なのか?マンハッタンの自然史博物館のくだりは何度読んでもいい。あと例によって現代日本から消えた大人の息遣いが横溢してうっとりする開高健の「短篇選」「サイゴンの十字架」「日本三文オペラ」など。帰りの電車でどんなに疲れてても開高健の本だけは眠くならない不思議。