専門家は常にアマチュアより正しい

オタク終活「ウルトラセブン」全49話。スペル星人含めてクール星人からゴース星人まで順番通りに全部観たのは多分生まれて初めではないか。勢い3日で全部観たら相棒に呆れられたけど、それぐらい面白かった。単純計算で1日2本が限界だったアイアンキングの9倍は面白いことになる。通して観るとデラックスなのは怪獣・宇宙人・妖怪が出揃うイカルス星人まで、以降は別の番組のように安っぽくなるのが明白だけど、そこをアイデアでカバーしてるのはサスガ文芸の円谷プロとむしろ好感が持てる。ちなみに10話以降でいちばん好きなハナシはシルバー仮面みたいなプロテ星人。しかしまあ、いまさらセブンもないよな。

努力と根性

NECO「犬神の悪霊」。いきなりやってたんでビックリした。邦画で裏五指に入る「女囚さそり・第41雑居房」の伊藤俊也監督がホラーを口実に相変わらず脈絡なく知的に、そしてダイナミックに撮ってる快作。出演者全員、必要以上に頑張ってたけど、特に子役の長谷川真砂美のラストの立ち回り(なんでこの手の映画のラストはアクションになるのかとは思うけど)と、三重町恒二の祈祷師、そして珍しく常識人の室田日出男の犬神憑きの儀式は必見ではないかと思う。恐怖譚の本懐が犬神そのものでなかったのもいい。コーマンみたいなラストも最高。しかし例えば「ダンス・ウィズ・ウルブス」なんか動物は本当に殺してません!とわざわざ断ってるところ、この映画はむしろ犬の断頭シーンは本物を使ってます!とコマーシャルしてるのが東映で時代やなあと。だから長年、この映画は日の目を見なかったのだと。1977年。

 

テレビシリーズを一応全部観た鬼滅の刃がいささか過大評価なのは異論のないところではあるが、例えばお子らの間でワンピースが流行るよりは鬼滅の刃が流行るほうが絶対に良いのは言うまでもなく、と言うかワンピースなんか見てたらまあ間違いなくアホになる。

シルバー仮面セブン

オタク終活「アイアンキング」全26話。途中で最終回がないことに気がついて、あわやテレビ埼玉状態だったところに相棒から名古屋のあれを急ぎ補填してもらって無事に完結。当時、カッコ悪い方が変身して、カッコいい方が敵を倒す展開が難しいなおい!と思いながらも結構楽しく見てた覚えがあるけど、いま観るときっぱり死ぬほどキツかった。石橋正次のファンの女性以外でこの番組が好きな人ってどうかしてると言うくらい。画面もハナシもあまりと言えばあまりに代わり映えしない展開に、わずか2クールで敵が三回も変わるのもどないやねんと。あえてエンディングが懐かしいのと、ウエットスーツVSウエットスーツの不知火ロボット軍団のプレミアム感が観るべきところかしら。あとアイアンキングシルバー仮面より断然、カッコいいと思う。しかしシルバーも新マンもアイアンキングも、いつも完走できない池谷仙克ってプロとしていかがなものかと。

 

ハインライン夏への扉」読了。どこぞでこの小説がドラえもんの原典だかなんだか書いてるのを見て、えっ、そうだったんですか、そら気がつかなかったなぁとわざわざ買って35年ぶりくらいに読んでみたけど、どこがやねん。タイムマシンで猫だからか?だとしたらアタマ大丈夫か?あえて藤子っぽいのは少女とおっさんが結婚の約束をするロリコン好きのするパートくらいではないか?ついでにハインラインなら「宇宙の戦士」のが絶対ですよ?

ハヤカワ

「日本SFの臨界点・怪奇編」読了。うっかり表紙につられて買った本で面白かった試しがないが、これはアンソロジーながらひときわ酷かった。まあエスエフ小説なんて邦洋問わず大半ろくでもないけど、改めて日本エスエフ小説の程度の低さを思い知ったみたいな。そんで表題作の血まみれ家族なんて数ページでも読んだワタシがバカでしたみたいな。

ドクタージャクソン

オタク終活「謎の円盤UFO」全26話。全話通して観るのは高校時分にサンテレビで再放送(うっかりスカイダイバー危機一髪を見損ねた)して以来なんで35年ぶりくらい。宇宙人の海底基地のハナシだけ相変わらずどうしようもなかったけど、ほかは全編、英国お得意のホラーやミステリーの風情にエスエフがスタイリッシュに加味されて文句のない出来ばえ。メカニックも最高、キャラクターも最高、実際、この番組が嫌いなトクサツファンってどうかしてると思う。ちなみにみんな大好きムーンベースの女性隊員ではエリス中尉より北浜晴子声のニナ少尉のが好み。

アンクルトリス

山口瞳開高健「やってみなはれ・みとくんなはれ」読了。サントリー社史を元社員の2強が綴る。山口瞳も好きだけど並べて読むと開高健がやっぱり圧倒的。と言うか開高が山口をサントリーに引っ張り込んだとは寡聞にして知らなかった。商売は陰徳と、不撓不屈の精神が必須と再認識する。あと現代の日本人はやっぱり働かなさすぎるのではないか。挿絵は当然みたいに柳原良平

 

石井光太「絶対貧困」も読了。アジアの貧困層のルポタージュ。まあたまにはこんなん読むのもいいんじゃない?みたいな。しかし老若男女問わず、彼らの生命への執着は見るべきところがある。

 

李恢成、かいせい?「われら青春の途上にて」も読了。古本屋の本棚で見つけて何回も買うたやめた音頭を踊った本。民族の誇りを具えた在日朝鮮人の日本での生き方の難しさを描く。表題作の構成も凄かったが、併載の「死者の残したもの」の、「とにかくあんたらは何にでも反対する、悪い癖よ、いいもんはいいといわにゃあなるめぇ」と民団のひとりがとうとう語る一連が圧巻だった。

 

マイク・モラスキー編「闇市」も読了。闇市に関わる日本短編文学のアンソロジー。太宰、永井荷風と目当ての野坂昭如はまあ間違いないところで、拾い物だったのが鄭承博の「裸の捕虜」と、平林たい子の「桜の下にて」の二編。前者は善良で実直な在日朝鮮人の好感度が作品の面白さに拍車をかける。後者は闇市と縁遠い世界で生きてきた女学生らを描く華やかな筆致と、これに次第に影を落とす戦後の困窮の陰影が美しかった。しかし同じく所収の坂口安吾は喩え短編でも相変わらずさーっぱりワカラン!

 

 

 

 

 

 

若者が死に、老人が生き残るというのは、僕が許せません、あなたが許せません

ヘミングウェイ「インディアン部落・不敗の男」読了。これに所収の「二心ある大河」のマス釣りと「不敗の男」の闘牛の微に入り細に穿ったディティール、序盤が奇妙に印象に残る「アルプス牧歌」は相変わらず素晴らしくてうっとりする一方、タイトル違いの半分以上読んでたハナシで、フィッツジェラルドともヘミングウェイももうほとんど読んでしまった感じで寂しい気分になる。

 

有馬頼義「遺書配達人」読了。戦友らの遺書を戦後の内地に届ける任務を憎みながら、その執念だけに生きる主人公が束ねる十数の遺族ら各々の境遇を描く。日本文学らしい、読んでるこちらが首をくくりたくなる陰鬱な筆致が圧倒的過ぎる。これが週刊文春連載の大衆小説だったと言うのが昭和の恐ろしさ。そしてそんな小説でも挿絵があるのが旺文社文庫

 

遠藤周作「白い人・黄色い人」読了。デビューに近い作品のせいか結構粗削り。どちらも邪悪な主人公は前者はリヨンのフランス人、後者は兵庫の日本人で、カトリックとナチズムをタブらせて描く前者のが面白かったけど、芥川賞は後者がとってるらしい。

 

当時、石原満の絵が嫌すぎてスルーしてたけど、なんとなく内容が気になってたダイガードがATXで始まった機会に観てみたら、ハナシも主人公も絵と同じくらいダメだったと言うオチ。しかも20年が経ったら絵の汚らしさもパワーアップしてまったく観るところなし。80年代以降で女の子が可愛くないアニメに存在価値があるのかと言うか、まだアニマックスでやってるスペースコブラのねーちゃんらのが可愛らしいのもどないやねんと。まあこのアニメを褒めとくと通っぽくていいかもね。とりあえず水島精二はダメだ。